長井氏は、東京藝術大学大学院で西村公朝氏の下で保存修復を学ばれたのち、現在地に古文化財保存修復研究所を設立された方です。

畳の部屋にはいたるところに修復途中の仏様が!

上の写真で横たわっているお仏像の頭部。
ボリュームのある表現はリアル。

頭部をはずした坐像は、過日、アユタヤに旅した時に見た、異教徒によって頭部のみ破壊された仏像を思い起こさせました。

坐像を解体し、構造を教授してくださいました。
中が空虚なのに、なんだ、この存在感は?

胸と頭部は一木で造り、後に胸の下あたりに鑿を入れて割るという技法で作られているそうです。

ご説明される長井氏。

古い時代の修復であるのですから、“経験と技術”が問われるのは理解できるのですが、創作の余地はない地味なお仕事だと思っておりましたら、「誰がそれを直したか?個性が出る!」というお話は興味深かったですね。
真摯で誠実なお人柄ながら、秘めた情熱を感じることが出来ました。

室町のほとけさま。すばらしいお顔。

ひざの辺りに漆で盛り上げた唐草文様がありました、きっとこの上には金彩が施されていたのでしょう。
平坦部には截金(きりかね)が鮮やかに残っていました。
急逝された江利佐代子さんを思い出しました。

光背の飛天におわすのは迦陵頻迦(かりょうびんが)でしょうか?
「随分金彩が残ってますね?」とお尋ねしたところ「江戸期あたりの後補でしょう」とのことでした。
これらの修復が終わり一体としてまとまったら、さぞかし壮麗な、浄土のような仏様になるのでしょうね。

この装飾、いまだに「どういう技法で造ったのか?」確定していないのだそうです。
「どうやったと思います?」と聞かれてしまいました。
私見:「パスタのように、漆と木粉やらを堅めに練ったものを文様に置いて造形し、漆液をあとからのせて定着したのではないか?」・・・・おおむね、皆さんも同様の見解のようです。

古物を観る右、長井氏、左、谷氏。

この小像は、長井氏が学生のときに模刻されたという奈良聖林寺の十一面観音像の木芯乾漆の芯木模型、これでこの像の正確な構造が分かります。
その向うに床に横たわっているのは、ナントそこから起してお造りになった原寸像だそうです。
表面を仕上げて金箔などで彩色し、金物などで荘厳すれば出来上がり、見事なものです。
長井氏はこの漆の技法である「乾漆」の専門家でもあります。
ちなみにあの阿修羅も「乾漆」の一種「脱活乾漆造(だつかつかんしつつくり)」です。
氏は修復だけでなく作品もお造りになっておられます。
「もったいない、仕上げて飾りましょうよ!」・・・・あとはスポンサー探しですかね?
どなたかこのお像を置けるところ知りませんか?
ここには書ききれませんが、私にとって、大変実りのある場でした。
お忙しいところご丁寧なご説明をいただきました。
長井さん、本当にありがとうございました。
今回の訪問は、先の長野の展覧会にお招きくださった小諸在住の
谷 進一郎氏のお誘いで実現したものです。
今回も学びの場にご一緒させていただきました。感謝です。
谷氏は
池田三四郎氏が主宰された、あの伝説の「松本民藝生活館」で修行後、天池で独立された木工家です。
やはり長野でご活躍の木工家丸山氏も同行されました。
ご参考、拙ブログ:
青山二郎氏との思い出を語る桜井佐七氏。